判例等からみる契約不適合責任【図解】

2025.07.21
コラム

【2025年版】あなたの不動産は大丈夫?
「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ。
知らなきゃ怖い、売主の新常識と売却リスク回避術

「長年住んだ愛着のある家を、売却しようか…」
「相続した実家、空き家のままではもったいないから現金化したい」

不動産の売却を考え始めたとき、多くの期待とともに、一抹の不安がよぎるのではないでしょうか。
特に、2020年4月の民法改正で、不動産売買における売主の責任が
「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」から「契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)」へと
大きく変わったことは、現代の不動産所有者にとって無視できない大きな変化です。

「昔の法律と何が違うの?」
「売った後で、買主からクレームが来たらどうしよう…」
免責特約さえ付けておけば安心だよね?」

そんな疑問や不安を抱えるあなたのために、本記事では、過去の裁判例リサーチの結果を踏まえ、
契約不適合責任の核心、それによって生じる具体的な売却リスク、
そして最も重要な「リスクを回避するための実践的な方法」を、解説します。

1. 「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」、何がどう変わったのか?

まず、根本的な違いを理解しましょう。
この二つの責任は、似ているようでいて、売主が負う責任の重さが全く異なります。

旧法:瑕疵担保責任
かつての瑕疵担保責任は、「隠れたる瑕疵」、つまり買主が通常の注意を払っても発見できなかった物件の欠陥(例:雨漏り、シロアリ被害など)に対してのみ、売主が責任を負うという考え方でした。
買主が請求できる権利も、基本的には「損害賠償」か「契約解除」の二択に限られていました。

新法:契約不適合責任
一方、現在の契約不適合責任は、「契約の内容に適合しないこと」全般に対して、売主が責任を負うという考え方です。
これは、単なる物理的な欠陥に限りません。
「種類、品質、数量」に関して契約の内容と異なる場合、すべてが「契約不適合」となります。

この変更により、買主の権利は大幅に拡充されました。

  1. 追完請求権(修補請求など): 「契約通りに直してください」と、修理や代替物の引き渡しを請求できる権利。
  2. 代金減額請求権: 修理がされない場合や不可能な場合に、「代金をまけてください」と請求できる権利。
  3. 損害賠償請求権: 従来通り、損害の賠償を請求する権利。
  4. 契約解除権: 契約の目的が達成できない場合に、契約を白紙に戻す権利。

つまり、売主は「知らなかった」では済まされにくく、かつ「お金を払って終わり」ではなく、「直す」ことまで求められる可能性が出てきたのです。
これは、売主にとって責任の範囲と重みが格段に増したことを意味します。

2. 免責特約は無敵じゃない!裁判例から見る、売主の具体的な売却リスク

「それなら、『契約不適合責任は一切負いません』という免責特約を付ければ大丈夫だろう」
そのように考えるのは早計です。
裁判所は、特定の状況下でこの免責特約を「無効」と判断しています。

リスク①:知っていた欠陥を告げなかった(悪意)

最も典型的なリスクです。
たとえ免責特約を結んでいても、売主が物件の欠陥(雨漏り、地中の埋設物など)を知りながら、それを買主に告げずに売却した場合、民法第572条に基づき、その欠陥について責任を免れることはできません。

【参考裁判例:東京地判平成15年5月16日】
このケースでは、売主が土地の地中埋設物について十分な調査をせずに「問題ない」と説明したことが「悪意と同視すべき重過失」と判断され、免責特約の効力が否定されました。
「たぶん大丈夫だろう」という安易な考えが、後に大きな責任問題に発展する典型例です。

リスク②:売主が「事業者」の場合(消費者契約法)

あなたが個人ではなく、法人として不動産を売却する場合や、個人でも事業として不動産取引を行っている場合、買主が個人(消費者)であれば「消費者契約法」が適用される可能性があります。
この法律は、事業者の責任を完全に免除するような、消費者に一方的に不利な特約を無効とします。

「一切の責任を負わない」という包括的な免責特約は、この法律によって無効と判断されるリスクが非常に高いと言えます。

リスク③:「現状有姿」の落とし穴

中古物件の取引でよく使われる「現状有姿(げんじょうゆうし)」という言葉。
これは「現状のまま引き渡す」という意味ですが、決して契約不適合責任を免除する魔法の言葉ではありません。

裁判例では、この特約は「買主が内覧などで普通に見て確認できる範囲の傷や汚れについては、後から文句を言わない」という程度の意味合いと解釈される傾向にあります。
壁紙の汚れや小さな傷は免責されても、給排水管の内部の腐食や、床下のシロアリ被害といった「隠れた不適合」については、現状有姿を理由に責任を免れることは困難です。

リスク④:心理的瑕疵・環境的瑕疵という見えざるリスク

契約不適合は、物理的な欠陥に限りません。
過去に事件や事故があった「心理的瑕疵」や、近隣に反社会的勢力の事務所があるといった「環境的瑕疵」も、買主が平穏に暮らすという契約の目的を達成できないとして、契約不適合と判断される可能性があります。

近年、国土交通省が「人の死の告知に関するガイドライン」を策定しましたが、これはあくまで取引上の目安。最終的に契約不適合にあたるかどうかは、個別の事情に応じて司法が判断します。

3. 今すぐできる!不動産売却のリスクを最小限に抑えるための実践的・戦略的アプローチ

では、売主はどうすればこれらのリスクから身を守り、安心して売却を進めることができるのでしょうか。答えは、契約前の「準備」と契約時の「誠実さ」にあります。

戦略①:【知る】ホームインスペクション(住宅診断)の実施

最も効果的な防衛策の一つが、売却前に専門家によるホームインスペクションを実施することです。
建物のコンディションを客観的に把握し、雨漏り、構造体の劣化、設備の不具合などを専門家の目でチェックしてもらいます。

  • メリット
    • リスクの可視化: 自分では気づかなかった不具合を発見し、事前に対処できる。
    • 正確な告知: 診断結果をもとに、正確な物件状況報告書を作成できる。
    • 交渉の円滑化: 診断済み物件として買主に安心感を与え、価格交渉を有利に進められる可能性がある。

費用はかかりますが、売却後の数百万円、数千万円にもなり得る賠償リスクを考えれば、極めて有効な投資と言えるでしょう。

戦略②:【告げる】物件状況報告書の正直かつ詳細な記載

ホームインスペクションの結果や、ご自身が知っている物件の状態を、「物件状況報告書(告知書)」に正直に、そして具体的に記載することが法的な義務であり、最強のリスク管理策です。

  • 記載のポイント
    • 曖昧にしない: 「雨漏りがあったかもしれない」ではなく、「〇年前に〇〇の箇所で雨漏りがあり、〇〇業者が修理した」と具体的に記載する。
    • マイナス情報こそ正直に: 過去の不具合や修繕歴は、隠すのではなく、むしろ積極的に開示する。
      その情報を含めて買主が納得して購入すれば、その点について後から責任を問われる可能性は格段に低くなります。
    • 「特になし」はNG: 安易に「特になし」と記載することは、後に不具合が発見された際に「知っていたのに告げなかった(悪意)」と推定される大きな原因となります。

「誠実であること」が、あなたを法的に守る盾となるのです。

戦略③:【定める】有効な免責特約の作り方

免責特約自体が悪なのではありません。問題はその内容です。
「一切免責」のような包括的な特約ではなく、責任の範囲を合理的かつ明確に定めることが重要です。

  • 有効な特約の例
    • 「売主は、本物件のうち、雨漏り、シロアリの害、建物構造上主要な部位の木部の腐食、給排水設備の故障についてのみ、引渡し完了後3ヶ月間に限り、契約不適合責任を負うものとし、その他の不適合については責任を負わない。」
    • 「本物件は築〇年を経過しており、柱・梁・壁・屋根などの建物の構造を支える躯体・基本的構造部分や、水道管・下水道管・ガス管などの諸設備について、自然損耗・経年劣化による性能の低下があることを買主は了承の上、買い受けるものとする。」

このように、責任を負う範囲と負わない範囲を明確に線引きし、買主の合意を得ることで、特約の有効性が高まります。
このあたりは専門的な知識が必要なため、必ず不動産会社の担当者や、必要であれば弁護士などの専門家と相談しながら進めましょう。

責任は重くなった。だからこそ、誠実な準備が光る時代へ

契約不適合責任への変更は、間違いなく不動産売主の責任を重くしました。
しかし、それは決して「中古物件は怖くて売れない」ということを意味しません。

「物件の状態を専門家と共に正確に把握し(ホームインスペクション)」
「知り得た情報を誠実に買主へ伝え(物件状況報告書)」
「お互いが納得する形で責任の範囲を明確にする(合理的な特約)」

という、取引の王道とも言えるプロセスを丁寧に行う売主こそが、
法的に守られ、トラブルなく、最終的に「良い売却だった」と満足できる時代になったと言えるでしょう。

あなたの不動産は、あなたの大切な資産です。
その価値を正しく評価してもらい、次の所有者へと気持ちよく引き継ぐために、
「新しい常識」をぜひ、あなたの売却活動にお役立てください。

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