大阪府の空き家事情

2025.07.19
コラム

大阪の空き家、初の減少!
でも喜べない?データが語る深刻な未来

「大阪府の空き家、ついに減少へ!」

2024年に発表された総務省の最新調査(令和5年住宅・土地統計調査)で、こんなニュースが報じられました。
大阪府内の空き家総数は約70万戸と、前回調査から1.1%減少し、統計開始以来初めての減少に転じたのです。

長年、右肩上がりで増え続けてきた空き家問題。
その流れが変わったことは、一見すると素晴らしいニュースです。
しかし、内容は素直に喜ぶことはできないものかもしれません。

実は、データを覗いてみると、この朗報の裏で、より根深く、深刻な問題が静かに進行していることが分かります。
今回は、調査データをもとに、大阪が直面する空き家・所有者不明土地問題を解説します。

朗報の裏に潜む「質の変化」- 大阪の空き家問題の現在地

まず、数字を詳しく見てみましょう。
大阪府の空き家総数が減ったのは事実です。しかし、その「中身」が大きく変化しています。

空き家の種類令和5年(2023年)増減率(前回比)
賃貸用の空き家436,100戸▲3.9%
売却用の空き家30,000戸▲16.2%
その他の空き家226,900戸+8.5%

(出典:令和5年住宅・土地統計調査)

注目すべきは、一番下の「その他の空き家」です。
これは、賃貸や売却の予定がなく、別荘でもない、いわば「放置されている可能性が極めて高い空き家」を指します。

市場で流通する「賃貸用・売却用」の空き家が大きく減る一方で、最も問題となりやすい「その他の空き家」は、なんと8.5%も増加していたのです。
総数が減ったのは、主に不動産市場の動向によるもので、問題の核心である放置空き家は、むしろ深刻化していると言えます。

さらに、この放置空き家のうち、一戸建ての21.8%に「腐朽・破損あり」というデータも出ています。
景観の悪化、倒壊の危険、害虫の発生、防犯上の不安…。
これが、大阪の空き家問題の「現在の姿」です。

なぜ「放置空き家」が増え続けるのか?背景にある2つの社会構造

では、なぜこれほどまでに放置される家が増えているのでしょうか。
その背景には、日本の、そして大阪が抱える2つの大きな社会構造の変化があります。

1. 人口減少と超高齢化の波

大阪府の人口は2010年をピークに減少に転じ、2050年には約726万人(2020年比17.8%減)まで減少すると予測されています。
同時に高齢化も進み、2045年には府民の3人に1人以上が65歳以上になる見込みです。

この人口構造の変化は、空き家問題に直結します。
親世代が亡くなったり、高齢者施設に入居したりすることで、実家が空き家になる。
しかし、子ども世代はすでに別の場所で家庭を築いており、実家に戻ることはない。
遠方に住んでいれば、管理のために頻繁に帰省することも難しい。
結果として、家は誰にも使われないまま、時間だけが過ぎていくのです。

2. 「相続」が「負動産」になる時代

もう一つの大きな要因が「相続」です。
調査では、空き家を取得した経緯の実に51.4%が「相続・贈与」でした。

かつて、親から土地や家を相続することは、資産を受け継ぐことと同義でした。
しかし今は違います。
不動産価値が下落し、買い手が見つかりにくい物件も増えました。
相続した瞬間から、毎年重くのしかかる固定資産税。
老朽化した家を維持・修繕するための費用。解体するにも100万円単位のお金がかかります。

「資産」どころか、維持するだけでお金が出ていく「負の資産」、いわゆる「負動産」を相続してしまうケースが急増しているのです。
相続人である子ども世代自身も、経済的に余裕があるわけではありません。
「いらない資産」のために、自分たちの生活費を削ることはできない。
こうして、相続を機に管理が放棄され、「その他の空き家」へと姿を変えていくのです。

所有者すら分からない土地 – もう一つの深刻な時限爆弾

空き家問題と密接に絡み合いながら、さらに事態を複雑にしているのが「所有者不明土地」の問題です。
これは、登記簿を見ても所有者が誰か分からない、あるいは分かっても連絡がつかない土地のことを指します。

主な原因は、相続時に不動産の名義変更(相続登記)が行われないまま、年月が経過してしまうことです。世代を重ねるうちに相続人はネズミ算式に増え、権利関係は複雑怪奇に。もはや誰が本当の所有者か、誰も分からなくなってしまいます。

国の推計では、この所有者不明土地は、このまま対策をしなければ2040年には北海道の面積に匹敵する規模になるとも言われています。

所有者が不明な土地は、公共事業を進めようにも用地買収ができず、民間での売買も凍結されます。
そして、その上に建つ空き家は、解体や活用の同意を得る相手がいないため、完全にお手上げ状態。
まさに、あらゆる手立てが封じられた、究極の放置物件となってしまうのです。

行政も奮闘!でも追いつかない?- 大阪府の対策と現実

もちろん、行政も手をこまねいているわけではありません。
国は「空家等対策特別措置法」を改正し、危険な空き家への指導や命令、最終的には強制的な解体(行政代執行)を行える仕組みを強化しました。
管理が不十分な空き家は、固定資産税が最大6倍になるペナルティも導入されています。

大阪府や府内市町村も、

  • 危険な空き家の解体費用の一部補助
  • 空き家をリフォームして活用する場合の改修費補助
  • 売りたい・貸したい所有者と利用希望者を繋ぐ「空き家バンク」制度

など、様々な対策を講じています。
しかし、こうした対策が、増え続ける放置空き家のスピードに追いついていないのが現実です。
補助金制度は手続きが複雑だったり、所有者に一時的な金銭負担が生じたりと、利用のハードルが高い側面もあります。空き家バンクも、登録される物件数や成約率が伸び悩んでいる地域も少なくありません。

私たちの街の未来は?今、私たちにできること

「2025年問題」団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護の需要が爆発的に増えるとされる問題です。
今後、相続をきっかけとした空き家は、さらに増加することが確実視されています。

この問題は、もはや「誰か」の問題ではありません。
あなたの実家が、隣の家が、そして自分たちの街全体が、この問題と無関係ではいられないのです。

では、私たちは何をすればいいのでしょうか。

まず、家を所有している、あるいは将来相続する可能性がある方は、
「元気なうちに、家族で家の将来について話し合う」こと。
これが最も重要です。「終活」ならぬ「住活」とも言えるこの対話が、子ども世代の負担を減らし、家が放置されるのを防ぐ第一歩になります。
2024年からは相続登記も義務化されました。
こうした制度を正しく理解し、問題を先送りしないことが求められます。

そして、一人の地域住民として、この問題に関心を持ち続けること。近所で危険な空き家を見かけたら、市役所に相談してみる。
地域の団体が主催する空き家活用イベントに参加してみる。
そうした小さな行動が、地域の安全と活気を守る力になります。

大阪府の空き家が初めて減少したというニュースは、一筋の光明かもしれません。
しかし、その光に隠された影の深刻さを理解し、社会全体で向き合っていく。
私たちの街の未来は、その姿勢にかかっているのではないでしょうか。

長年放置された空き家、遠方に住んでいて管理できない実家、老朽化が進み雨漏りやシロアリ被害にあっている建物、家具家電など生活用品が残ったままの戸建て&区分所有マンション、片付けが困難なゴミ屋敷、自殺・孤独死などがあった建物、他の不動産業者に断られてしまった不動産など

株式会社Go不動産(ゴーフドウサン)は、どんな物件でも買取りや売却のご相談承ります!
不動産でお困りの方はご連絡下さい!

株式会社Go不動産
TEL:06-6155-4564 / FAX:06-6155-4566
MAIL:info@go-fudosan.com