古都・奈良県 データから見る空き家の現実

2025.07.19
コラム

奈良県の空き家・所有者不明土地問題リサーチ
データが示す深刻な実態と未来への課題

全国的に深刻化する空き家問題。古都・奈良県も例外ではありません。
しかし、データを深く掘り下げると、全国平均を上回る空き家率の裏には、他の都道府県とは異なる奈良県特有の構造的な課題が浮かび上がってきます。

本稿では、最新の統計データに基づき、奈良県の空き家件数と所有者不明土地問題の推移をリサーチし、その深刻な実態と背景、そして未来に向けた展望を分析します。

奈良県の空き家・所有者不明土地の現状:最新データから見る深刻さ

まず、客観的なデータから奈良県の現状を把握しましょう。

【空き家】増加の一途をたどる9.4万戸、しかし県内で深刻な地域差

総務省が発表した最新の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、奈良県の空き家数は9.4万戸、住宅総数に占める空き家率は14.6%に達しました。
これは2018年の前回調査から6,400戸の増加であり、全国平均の13.8%を上回る水準です。

しかし、この「14.6%」という数字だけでは見えない深刻な実態があります。
それは、県内における圧倒的な地域差です。

  • 特に深刻な南部・東部山間地域:
    • 五條市: 28.65%
    • 御所市: 24.38%
    • 吉野町: 23.36%
    • これらの地域では、実に4軒から5軒に1軒が空き家という驚異的な状況が生まれています。
      特に賃貸や売却の予定がない「その他の住宅」(放置空き家)の割合も高く、問題の根深さを物語っています。
  • 比較的低い北西部、しかし課題も:
    • 香芝市: 6.89%
    • 斑鳩町: 6.66%
    • 大阪のベッドタウンとして発展したこれらの地域は率こそ低いものの、かつてのニュータウンで住民の高齢化が進み、相続を機に空き家となるケースが増加傾向にあり、新たな課題として浮上しています。

【所有者不明土地】隠れた時限爆弾「地籍調査」の遅れ

空き家問題と密接に絡み合うのが「所有者不明土地」の問題です。
相続登記がされないまま世代交代を繰り返し、現在の所有者が誰なのか分からなくなってしまった土地は、売買も活用もできず、固定資産税の徴収漏れや管理不全の原因となります。

奈良県に特化した所有者不明土地の面積や割合を示す直接的な統計は、残念ながらまだ整備されていません。
しかし、その深刻度を測る極めて重要な代理指標があります。
それが「地籍調査の進捗率」です。

地籍調査とは、一筆ごとの土地の所有者、地番、境界などを明確にする調査のこと。
これが進んでいないことは、土地の権利関係が曖昧な場所が多いことを意味します。

国土交通省の令和4年度末のデータによると、奈良県の地籍調査進捗率は、
全国平均(52%)を大幅に下回るわずか12%
近畿圏の平均(19%)と比べても著しく低い水準です。

この「地籍調査の遅れ」こそ、奈良県の土地問題の根幹と言えます。
土地の境界が不明確なため、空き家を売却しようにも買い手がつかず、結果として放置され、やがて所有者不明という状態に陥る負のスパイラルを生み出しているのです。

なぜ増加は止まらないのか?奈良県特有の「2つの要因」

奈良県の空き家・所有者不明土地問題の背景には、全国共通の「人口減少・高齢化」という大きな流れがあります。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、奈良県の人口は2070年には現在の約半分(68万人)にまで減少すると予測されています。

しかし、それに加えて、奈良県特有の以下の「2つの要因」が問題をより複雑で根深いものにしています。

要因1:人口構造の二極化(過疎地型とベッドタウン型)

前述の通り、奈良県の問題は地域によってその様相が全く異なります。

  • 過疎地型: 人口流出と超高齢化が著しい南部・東部山間地域では、生活の利便性が低く、家の買い手も借り手も容易には見つかりません。
    家や土地は「資産」ではなく、管理コストだけがかかる「負動産」と化し、相続放棄や放置につながっています。
  • ベッドタウン型: 大阪の通勤圏として発展した北西部のニュータウンでは、第一世代の住民が一斉に後期高齢者となり、相続期を迎えています。
    子世代はすでに他の場所で生活基盤を築いているケースが多く、実家を相続しても戻る選択肢がなく、結果として空き家になってしまうのです。

この「過疎地型」と「ベッドタウン型」という性質の異なる問題が同時に進行しているのが、奈良県の大きな特徴です。

要因2:「地籍調査の遅れ」という根本的欠陥

繰り返しになりますが、これが最も深刻な要因です。
地籍調査の遅れは、単なる行政手続きの遅滞ではありません。

  • 土地取引の停滞: 境界が不明確な土地は、金融機関の担保評価が低くなったり、トラブルを恐れて買い手が敬遠したりするため、市場での流動性が著しく低くなります。
  • 対策の効果を削ぐ: 自治体が空き家バンク制度を設けても、土地の権利関係が複雑で、売買や賃貸の交渉に進めないケースが後を絶ちません。
  • 問題の先送り: 2024年4月から相続登記が義務化され、これまで水面下にあった所有者不明土地問題が顕在化しつつあります。
    国が創設した「相続土地国庫帰属制度」(不要な土地を国に引き取ってもらう制度)の利用が急増していることからも、管理に窮した土地所有者の悲鳴が聞こえてきます。
    地籍が不明確な土地は、この制度の利用においても障壁となる可能性があります。

対策と今後の展望:解決への道筋はどこにあるのか

もちろん、国や県、市町村も手をこまねいているわけではありません。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、危険な空き家を「特定空き家」に指定し、助言・指導から行政代執行までを行う枠組みが整えられています。

また、生駒市の「いこま空き家流通促進プラットホーム」のように、行政と民間事業者が連携し、空き家の発掘から活用までをワンストップで支援する先進的な成功事例も生まれています。

しかし、これらの対症療法的な取り組みだけでは、根本的な解決には至りません。

今後の展望として、以下の2つの視点が不可欠です。

  1. 地籍調査の抜本的な加速: これこそが最大の処方箋です。
    地籍調査は時間とコストがかかりますが、これを進めない限り、土地の流動化は進まず、あらゆる対策が目詰まりを起こします。
    県が主体となり、長期的な計画のもと、市町村と連携して強力に推進することが求められます。
  2. 「縮小社会」を見据えた都市計画: 人口が半減する未来を見据え、従来の拡大・維持を前提としたまちづくりからの転換が必要です。
    居住エリアを緩やかに集約する「コンパクトシティ」の考え方を取り入れ、インフラ維持のコストを抑制するとともに、活用が見込めない土地については、森林に戻したり、再生可能エネルギー施設用地として活用したりするなど、新たな価値を見出す発想が重要になります。

奈良県の空き家・所有者不明土地問題は、単なる件数の多さ以上に、「深刻な地域差」と「全国ワーストレベルの地籍調査の遅れ」という根深い構造的課題を抱えています。

個別の空き家対策を進めると同時に、その土台となる土地の権利関係を正常化する「地籍調査」という大手術に踏み込まなければ、問題解決の道筋は見えてきません。これは、人口減少という避けられない未来に対し、奈良県がどのように適応していくのかを問う、長期的な挑戦と言えるでしょう。

奈良県生駒市/奈良市/香芝市/大和郡山市/大和高田市/天理市/橿原市/平群町/斑鳩町など

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