物価高による全国的な賃料上昇

2025.08.10
コラム

物価高で家賃は上がる?賃料値上げの法律と交渉

「あらゆるモノの値段が上がっているのに、家賃だけ変わらないのはおかしいのでは?」
「大家さんから、突然家賃の値上げを告げられたらどうしよう…」

近年の物価高騰を受け、賃貸物件のオーナー(大家)様、そして入居者(借主)様の双方から、このような声が聞かれるようになりました。
光熱費や食料品だけでなく、建物の修繕費や管理コストも上昇しており、賃貸経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。

そこで今回は、「賃料の値上げ」というテーマについて、不動産市場のデータを基に解説します。

賃料の値上げは「可能」。ただし「一方的にはできない」

まず結論から申し上げると、大家さんが借主さんに対して賃料の増額を請求することは、法律で認められた正当な権利です。

その根拠となるのが「借地借家法 第32条(借賃増減請求権)」です。

借地借家法 第三十二条
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。(後略)

この法律の重要なポイントは、これが「強行法規」であるという点です。
しかし、強行規定であるからといって、大家さんが「来月から2万円値上げします」と一方的に通告し、強制できるわけではありません。
あくまで「請求することができる」権利であり、最終的には双方の合意、あるいは法的な手続きを経て初めて値上げが実現します。

値上げが認められる「3つの正当な理由」とは?

では、借地借家法が定める「値上げを請求できる正当な理由」とは具体的に何でしょうか。
条文を分かりやすく紐解くと、主に以下の3つの客観的な理由が挙げられます。

  1. 固定資産税などの負担が増えた(公租公課の増減)
    物件にかかる固定資産税や都市計画税は、数年ごとに行われる評価替えによって増額されることがあります。
    このような大家さんの直接的な負担増は、賃料値上げの正当な理由として認められやすい要素です。
  2. 土地や建物の価格そのものが上がった(不動産価格の変動)
    地域の再開発やインフラ整備、地価の上昇などにより、物件そのものの資産価値が上がった場合も値上げの理由となります。
    近年の不動産価格や建築費の高騰は、この要因に該当する可能性があります。
  3. 周辺の類似物件と比べて家賃が明らかに安い(近隣相場との比較)
    おそらく、これが最も一般的な理由でしょう。
    同じ地域にある、同じような間取り・築年数・設備の物件と比べて、現在の家賃が著しく低い場合、
    「不相当」であるとして増額が認められる可能性が高まります。

【ポイント】「物価高だから」だけでは不十分
注意したいのは、「最近、物価が上がっているから」という漠然とした理由だけでは、法的な根拠としては弱いという点です。
物価高騰が、上記の①~③(特に固定資産税の増加や不動産価値の上昇、結果としての近隣相場の上昇)にどう影響したのかを、客観的なデータで示す必要があります。

【大家さん向け】賃料値上げを円満に進める4ステップ

権利があるからといって、強引に進めれば入居者との信頼関係を損ない、退去につながりかねません。
円満な合意を目指すための手順を踏むことが重要です。

ステップ1:客観的な根拠データを準備する

まずは、なぜ値上げが必要なのかを具体的に示すための証拠を揃えましょう。
感情論ではなく、データを示すことが交渉の第一歩です。

  • 必須レベルの資料
    • 固定資産税・都市計画税の納税通知書(増税されている場合)
    • 近隣の類似物件の賃料がわかる資料(不動産情報サイトの募集情報、不動産会社からのヒアリング結果など)
  • より強力な資料
    • 不動産鑑定士による鑑定評価書:費用はかかりますが、調停や訴訟に発展した場合、裁判所が最も重視する客観的な証拠となります。

ステップ2:誠意をもって借主に通知する

根拠が揃ったら、借主に値上げのお願いを通知します。

  • 通知方法:口頭ではなく、書面で通知しましょう。
    後のトラブルを防ぐため、「配達証明付き内容証明郵便」を利用するのが確実です。
  • 通知のタイミング:法律上の決まりはありませんが、借主が検討する時間を十分に確保するため、契約更新の3ヶ月~半年前など、できるだけ早い段階で通知するのが望ましいでしょう。
  • 文面:一方的な決定事項としてではなく、あくまで「お願い」「ご協議のお願い」という丁寧な姿勢で、値上げの理由と希望額、そしてその根拠を明記するよう心がけましょう。

ステップ3:交渉のテーブルに着く(協議)

通知後、借主から合意できない旨の返答があれば、協議(話し合い)を行います。

  • 高圧的な態度はNG:「法律で決まっている」「嫌なら出ていけ」といった態度は絶対に避けましょう。
  • 譲歩案の検討:満額での合意が難しい場合、譲歩案を用意しておくことも有効です。

ステップ4:合意に至らない場合は法的手続きへ

どうしても話し合いで合意できない場合は、法的な手続きに移行します。

  1. 調停:まずは簡易裁判所で、調停委員を交えて話し合いを行います。
    いきなり訴訟はできず、必ず調停を経る必要があります(調停前置主義)。
  2. 訴訟:調停でも合意に至らない(不調に終わった)場合、最終手段として訴訟を提起し、裁判所に「相当な賃料」を判断してもらうことになります。

【借主さん向け】値上げを要求された時の5つの対処法

ある日突然、大家さんから値上げの通知が届いたら、誰でも驚き、不安になるはずです。
しかし、感情的に対応する前に、冷静に対処することが重要です。

  1. まずは通知内容を冷静に確認する
    「値上げ」という言葉に動揺せず、書面の内容(希望額、値上げの理由など)をしっかり確認しましょう。
    一方的に拒否するのではなく、まずは協議に応じる姿勢が大切です。
  2. 値上げの客観的な根拠の提示を求める
    大家さんには値上げの理由を説明する義務があります。
    「なぜ値上げが必要なのですか?」
    「周辺相場と比較した資料など、客観的な根拠を示してください」
    丁寧な態度と言葉で対応し、説明を求めましょう。
  3. 自分で相場をリサーチする
    提示された値上げ額が妥当かどうか、自分でも不動産情報サイトなどで調べてみましょう。
    物件の立地、築年数、広さ、設備などの条件が近い物件の募集賃料を確認し、現在の家賃や提示された新家賃と比較します。
  4. 交渉のテーブルに着き、こちらの状況も伝える
    大家さんの提示した根拠や自分で調べた相場を踏まえ、協議に臨みます。
    • 提示された値上げ額に納得できない場合は、その理由(「周辺相場と比べて高すぎる」など)を具体的に伝えます。
    • 「〇〇円までならお支払いできます」と、支払い可能な上限額(対案)を提示するのも有効な交渉術です。
  5. どうしても合意できない場合
    話し合いで合意に至らない場合でも、家賃の支払いをストップしてはいけません。
    家賃不払いは契約解除の理由を与えてしまいます。
    • 行動:値上げには同意しないが、従来通りの家賃は支払い続けましょう。
      もし大家さんが受け取らない場合は、「供託」という法的な手続きもあります。
    • 相談:不安な場合は、一人で抱え込まずに、各自治体が行っている無料の法律相談や、消費者センター、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

【ケース別】居住用と事業用(店舗・事務所)で交渉のポイントは違う?

基本的には同じですが、居住用物件と事業用物件では、交渉の力学やポイントが少し異なります。

  • 居住用物件
    • 特徴:生活の基盤であり、借主保護の観点がより重視される傾向があります。
    • 交渉:大家側は、安定した長期入居者を失うリスクを考慮します。
      借主側は、生活への影響を訴えることが交渉材料になる場合があります。
  • 事業用物件(店舗・事務所)
    • 特徴:賃料が高額なケースが多く、値上げが事業経営に与えるインパクトが非常に大きいのが特徴です。
    • 交渉:テナント(借主)側は、その場所での売上実績や顧客基盤、長期契約の実績といった「事業上の貢献」をアピールすることが交渉のカードになり得ます。
      大家側も、優良なテナントが退去し、後継のテナントがすぐに見つからない「空室リスク」を天秤にかけるため、交渉はより慎重かつビジネスライクに進む傾向があります。

対立ではなく「協議」で円満な合意を

賃料の値上げは、大家さんにとっては経営を維持するための重要な手段であり、借主さんにとっては生活や事業に直結する切実な問題です。

重要なのは、どちらの立場であっても、感情的になって対立構造を作らないことです。
大家さんは権利を振りかざすのではなく、客観的なデータに基づいて丁寧に説明する。
借主さんは一方的に拒絶するのではなく、まずは話し合いのテーブルに着いて、こちらの状況を誠実に伝える。

貸し手と借り手は、本来、物件という資産を通じて協力し合うパートナーです。
この基本に立ち返り、お互いの状況を尊重しながら冷静に協議することが、双方にとって最も望ましい解決への近道となるでしょう。

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